源六は民宿らしい民宿です。ホテルのような施設や設備はありませんが、
その分、心温まるおもてなしと、いきとどいた接客ができると自負しております。

手作りの料理、ちょっとしたこだわりの品々…
どれをとってみてもご満足のいただけるものと思います。

ぜひ一度、この山陰の片田舎に足を運んでください。
きっと日頃の疲れをとり、ゆっくりとした時間の中で、
明日への元気が湧いてくるものと思います。

●女将のエッセイ

実在を問う

嶋田 冨美代

迫りくる盾怯えつつ怯えつつ確かめている私の実在
「今日生きねば明日生きられぬ」という言葉想いて激しきジグザグにいる

 

『無援の抒情』

道浦母都子

七十年代末期の激しい学生運動の最中に身を置いて、自分自身の存在意義を問いかけている。
あの時の運動は単なる闘争や、制度の改革などではなく、社会への改革、体制の変革、自分自身への問いかけであった。道浦はまさに全共闘の真っただ中にいて、その高揚と寂寥、屈辱と無惨を身をもって体感した。盾の向こうは茫洋とした、巨大な体制である。それを前にして、怯みつつ前進せざるを得ない。その時の自分の存在はと、自分の命、家族、身の回りの者たち、自身への問いかけがオーバーラップしてくるのだ。私は全共闘に、拙い気持ちだけのシンパであったが、何回目かのジグザクの中で、警官にこん棒でひどく殴られ、それを機に運動から遠ざかった。だから、同じように語る資格はないけれど、極限状態に置かれたときの気持ちはよく理解できる。

 

ひとつ生涯閉じて眠りに入るごとく今宵少女の旅を終えたし
灯台に灯のともるときわが内にひとつ確かな生命を欲りぬ

騒乱罪が適用されて、道浦は連行されてしまう。ビラ一枚無い部屋に刑事五人がやってきた。収監されて、釈放されて、しばらく心病んでいく。リーダーの飲み代に消えしカンパ、報復の名のもとに虚しく流される血、内ゲバに追われる学園、リンチ受くる少女のかたえを黙して通るなどの短歌が続いていく。そして、「今だれしも俯くひとりひとりなれわれらがわれに変わりゆく秋」という思いで結婚する。ひとつ生涯を閉じたかのように。しかし、それも宗派による傷つけあう日常となってしまう。「 悲劇にも優しき終わりあるものを革命劇の底なしの沼」と、少し距離を置く。それでもプラハの春への思い、刑終えて三里塚に住む君を思い、そしてどこかさめているようなやましさを持ちながら、悲しみながら、生き継いでいく。少女のようなお前が離婚するのかと父親に言われながら。

 

生きていれば意志は後から従きくると思いぬ冬の橋渡りつつ

 

週一度ボランティアとして通いながら自分を取り戻していく道浦。「精神の飢えなるものもつづまりは欲望にすぎぬと思い至りぬ」などの短歌が見えて、盛んに読まれている無彩色の空とか、夢は、今までの閉鎖的な、ストイックな、索漠とした世界を感じているのではないかと思えてくる。生きていれば、何か自分の道が開けていくように、意志が従いてくると詠う。たまらなく不安で、なかなか次の世界へ踏み出せないようだが、この橋を渡りながらゆっくり乗り越えていく硬い意志がそこにある。

 

2024.6.17 源六・女将 嶋田冨美代

●女将のエッセイ

ムーミンの国

嶋田 冨美代

世界には、中国の天安門事件、イラク、アフガニスタンなどの中東戦争、クルド人の難民問題、ミャンマーの軍事弾圧など紛争は多々あれど、第二次世界大戦後に生まれた私にとって、戦さとは令和四年の二月より始まった、ロシアによるウクライナ侵攻のインパクトがつよい。やはり、北方領土や尖閣諸島問題が身近に迫ってきているからともいえる。今回は直近で令和四年に『朝日歌壇』に掲載されていた投稿者の共鳴できる短歌を挙げてみたいと思う。

 

モザイクは市民の遺体 後ろ手に縛られている手だけが見える

五月十五日 川上 美須紀

道端や野良に横たわる遺体、顔にモザイクがかかっているのだが、手が縛られたまま射殺されている。遺体には爆弾が仕掛けられていて、ウクライナ側が処理しょうとすれば、爆発仕組みになっている。遠隔で処理しているところを、西側諸国に公開すれば、ロシア側はウクライナ側の仕業で、作り話だという。

 

映るたびテレビのチャンネル替える妻 替えても替えてもプーチンがいる

六月十二日 愛川 弘文

私も同じ思いで、もう見たくないといつも思っている。どうにかならないか、プーチンさえと思ったりするが、マトリョーシカの如く、プーチンめいた指導者が次々に現れそうだ。上手くまとめておられると思う

 

ムーミンの国にあまたのシェルターと兵役ありと知る聖五月

六月十二日 瀬口 美子

映画やアニメの世界で平和で神秘的なイメージのウクライナ。誰も外部からの侵入を警戒し、これだけの広大で頑丈なシェルターを構築していたなんて考えもしなかっただろう。特にマリウポリのアゾフ製鉄所の地下壕は驚愕に等しかった。ロシヤに連れていかれた千人強のアゾフ隊の運命は国際の捕虜の法律に則って裁かれてほしい。

 

争は話題にならず静かなる事務所に響くコピー機の音

六月五日 月城 龍

私たちは毎日のようにウクライナの侵攻が平和に収束しないか、話題にしたり、吐息を吐いたりしているのだが、平穏な日本の中で、仕事をしている周囲から何の反応もなかったら、敗北感で、私のこの心を癒してくれるものたちがいない寂寥感をひしと感じてしまうだろう。一日も早期の平和的な戦争停止が望まれて仕方がない。

2023.5.18 源六・女将 嶋田冨美代