源六は民宿らしい民宿です。ホテルのような施設や設備はありませんが、
その分、心温まるおもてなしと、いきとどいた接客ができると自負しております。

手作りの料理、ちょっとしたこだわりの品々…
どれをとってみてもご満足のいただけるものと思います。

ぜひ一度、この山陰の片田舎に足を運んでください。
きっと日頃の疲れをとり、ゆっくりとした時間の中で、
明日への元気が湧いてくるものと思います。

●女将のエッセイ/一分子観察

一分子観察に目は疲れつつ輝点の動きは時にきまぐれ
永田 江 第四歌集『春の顕微鏡』


全反射照明蛍光顕微鏡を用いて、細胞膜上のタンパク質分子の挙動を観察するという説明書きがある。
また別の短歌に「1/30秒に1/5ミクロンほど動く コーヒーを淹れに立ち上がる」がある。
気の遠くなるような小さな分子を、微小の時間で顕微鏡の中で追っている彼女の姿が見れる。
一つの分子は時にきまぐれで、容赦のない動き方をする。じっと研究室の中で、目を凝らし、忍耐強く、分子の動きを観察している。


彼女は四年間、東京で博士研究員として働き、二〇〇八年に京都大学の博士研究員になった。
『春の顕微鏡』はその前後の五年間が収めている。その間は母である河野裕子の死と、不意に自然に決まったという自分自身の結婚があった。
女性らしくいつも片隅で片思いしているような、すぐに心壊れそうな短歌が印象的だったが、芯はしっかりしていて、
仕事も高いスキルがあり、有能で、きちっとしている感じである。


肝臓の細胞とどく秋の日のほのかな廊下に受け取りサインす


発泡スチロールの中に、ドライアイスとともに届けられた魂への思いがある。
描かれていないが、その背後にある、なんと表現のしようのない寂しさ、人間の尊厳、生命の重さなどがそこに映し出されている。


EtBr(エチブロ)の褐色のビン「気を付けて」と台の奥へと押し込まれたり


液体のモラトリアムは流れ出すコルクをひとつ抜けばすなわち


EtBrはDNA断片の可視化に用いる試薬。発がん性があると記されている。
ちょっと間違えれば大変な事態になるような研究現場に彼女はいる。
研究成果を「液体窒素に預けてゆく」、また「液体窒素跳ね足元しろくわれは佇む」などの短歌もある。
地味な作業だが、気長に続けて、人類の未来の進歩につなげていってほしいし、そこから感じられる彼女しか発せれない短歌をこれからも期待している。


2020.5.28 源六・女将 嶋田冨美代